「レキシントンの幽霊」村上春樹
私がたまたまレキシントンというところに行ったことがあるので手に取った本ですが、そういうところに関係なく興味深く読みました。村上春樹の90年代の短編集です。まあ,不思議な話奇妙な話ではあるのですが、喪失感とか孤独感の方を強く感じさせる作品が多いですね。
「レキシントンの幽霊」「緑色の獣」「沈黙」「氷男」「トニー滝谷」「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」の7編ですが、タイトルからして個性的でわくわくします。
「沈黙」が普通ぽい感じですが、実際にありそうで身近な感じのいじめの話です。読後感は悪いけどいい作品です。逆に読後感が爽やかなのは「めくらやなぎと、眠る女」で、この本の中では異色です。83年に発表された「めくらやなぎと眠る女」を、95年に短くして少し内容を変えた作品で、点を入れて区別しています。「レキシントンの幽霊」もジャズ好きの人は気に入るかもしれませんね。まあ、どれも甲乙つけがたい短編です。
さめない夢なのか さめてからが夢なのか 氷男は南極に戻り、建築家は眠りの衣をまとう。台風の目が心を裂き、チョコレートは音もなく溶けていく。村上春樹の短編小説の世界
このコピーのよく分からない感もなかなかですね。
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レキシントンの幽霊 (文春文庫)